Klang-Gear Blog

DTM中年、martin の アマチュアとして 生きて熱く音楽をやるということを ダラダラ書く日記。

martin、平成をDTMと共に振り返る話。

年号が変わるまであと数日という所です。

 

テレビとかではどんだけやるねんていうくらい平成を振り返ったり、
元号の令和にひっかけた政党が出てきたり(笑)
色々と賑やかしいわけですが、

 

martinも平成を、主題のDTMと共に振り返ってみたいと思います。

 

平成は、(特に平成初期)アマチュアDTMのクリエイターにとっては
文化が大きく花開いた、DTMエイジとも言える時代です。

 

今や若い人は知らないかもしれませんが、その立役者として
日本のアマチュアDTMの黎明期を支えたのは間違いなく
ヤマハとローランドの2社です。

 

SteinbergやNativeInstrumentやEastWestではありませんし、
AI搭載のイコライジングができるGullfossでもありません(笑)
彼らは制作現場がDAW(オーディオワークステーション)化してから
台頭してきたデベロッパーですね。

 

*平成初期はインターネットもまだ低速でMP3などのデジタルオーディオも
 ほとんど普及していなかったので、ユーザーは容量の軽い
MIDIデータ(楽譜、音楽の設計図)で
投稿したり、データを交換しているのが普通でした。(ここ大事)

 

オーディオを扱うという概念がありませんから、DAWという言葉もなく、
パソコンによるスコアの打ち込みで曲を作るという意味で
「シーケンスソフト」とか「ステップシーケンサー」という言葉が
もっとも使われてました。

 

DTMという言葉は、ヤマハ、ローランドがコンシューマ向けの作曲パッケージ
シーケンサー+ハードウェア音源)を売り込んだ時に
推奨された言葉だったように思い出します。
この辺り本件のメインなので詳しく後述しますよ。

 

今は若い人に話を聴いてると、MIDIで曲公開してたの!?
みたいな事はよくある反応ですね。
今あえてそれをやっている若者(@rsy_fsignal)とも最近出会いましたが…

 

日本の歴史ある2社が、どうしてこのコンシューマ事業をスタートしたのかまでは
今の部長さんや役員さんくらいに聴かないと分からないかもしれませんが(笑)
彼らのこの事業こそ、かけがえのない仕事で、
今日の日本のDTMerの根っこなのですよ。(と私は思う)

 

当時、デジタル楽器の基本的な性能を規格化して、
メーカー問わず再生や作曲データに互換性を持たせましょうという事で、
仕様としてGM(General MIDI)が始まりました。

 

この規格の始まりがアマチュアでもパソコンを使って音楽が作れる文化を
実現し、広げたと言っても過言ではない、と私は思っています。


GMについてはこちらを。

https://ja.wikipedia.org/wiki/General_MIDI


その後、その2社はGM規格を基本として、その延長線上に上位互換として
新たな楽器(リアルな音や、GM規格でカバーされない楽器など)や

エフェクターを搭載した新製品を短期間にどんどん開発していきます。

 

この2社はGMについては同じ足並みで進めたのだと思いますが、
新製品を作っていく上では独自規格にならざるを得なかったようで、

 

ヤマハは上位互換規格に"XG"、ローランドは"GS"と独自の規格を作り、
完全にヤマハ VS ローランドの市場競争をしていく事になりました。

 

DTMerさんたちもヤマハ派、ローランド派に分かれてました。
たまに両刀使いのNS5R / KORG派とかもいましたが、これが理解して頂けていたら
あなたはmartinと3日3晩お酒を飲みかわせます。(笑


話がずれましたが、本来 "規格" は いわば"規格内に収める" ことで汎用性を拡大して
その規模や市場性を大きくすることに大事さがあるわけです。


規格に準拠して曲を作ることで、聴く方の機材にあわせてMIDIデータを変更し、
再現性をコントロールすることができる、
しいてはGMよりも拡張性のある音源などを利用して、
汎用性のあるリスニング用データを作るという事ができるわけですが、

(持っている機材の優劣があっても、ある程度誰でも同じ音で聞けるように)

 

実際の所 XG、GS規格は2社の最低限の再現性は確保する程度の役割で、
規格設定後に新しく出てきた機材の楽器やエフェクターなどを
カバーすることは仕込まれていませんでした。

 

さらに、皮肉にも開発競争が激化した結果、2社は頻繁なモデルチェンジを繰り返し
結局 "規格"は "規格"としては生きずに
音源の再生互換性を保証するものは"機材そのもの"になってしまいました。

 

(ようするに作曲者と同じ機材を持ってないと、
ちゃんとした音で聞けないよ、ということです。)

 

*リスニング専門の人がわざわざ高価なハード音源を買うなんて、
考えずらい…が、当時そんな人もいたという事も驚き。
日本ファルコムのPCゲームなんてそんな感じでしたよね。
ROLAND SC88VL相当を持ってると更にいいよ!みたいな。
音楽流すための機材がゲームより高いじゃん(笑)

 

この互換性の部分には、当時のユーザーは
多少のとまどいを感じたと思いますが、

 

この規格がナンセンスになったことを嘆く人はあまり居なかったと思います。
規格統一よりも「いい音」、「いい音源」を作る方が大事だと
市場が求めたというところでしょうね。

 

それでも、ある時期にGM規格というラインでノーサイドとし、
ヤマハ、ローランドのアマチュア向け開発事業に火がつきました。

 

同じ頃に、ゲーム音楽を創作しようというアマチュアの文化が
大きく推進する事になったのは彼らの音源があったからこそではないでしょうか。

 

初めてSC88を触り、MU90を触り、「こんな良い音で作曲できるの!?」と
夢を膨らませた人は私だけではなく、多くの人がこのショックを受けたと思います。

植松伸夫さんが未だにSC88Proを使ってるなんて話もどこかで見たような。

 

 

なんせこの2社を中心とするコンシューマ商品の開発が盛り上がり、
今日のDTM市場の礎が築かれていった事は、今の30-40代のプロ作曲家で
知らない人はいないでしょう。

 

このヤマハ、ローランドによる開発戦争は非常に盛り上がりました。

 

ユーザーサイドでは多くの投稿サイトや、ユーザー同士の相互リンクや
同じ機材持ちのコミュニティ(当時リング、とか言ってました)ができたり
マチュア作家の創出には大きな影響を与えたでしょう。

 

しかしPCの発達とともに黒船が来航します。

 

無限の拡張性をもつソフトシンセ、即ち"VST"を引っ提げて
DAWの雄・SteinbergCUBASEが登場。
そしてそれまでのソフトシンセの弱点である
再生レイテンシーを完全に補う事に成功したオーディオインターフェースでも
M-AUDIO社(現AVID TECHNOLOGY)が audiophile2496などで

日本でヒットを飛ばします。

DAWにおいてはPROTOOL、LOGIC、DigidesignのDPなど
一気に競争が激しくなりました。

 

ヤマハが後追いで出したSOLやSEQUELは即開発中止(Steinbergの買収もあってか)、
そしてつい最近、ROLAND系のSONARも歴史に幕を閉じる結果になりましたね。
(地味にSINGER SONG WRITER系のソフトのデベロッパとかも残ってるけど)

 

いまやDAW、VSTI、音源ライブラリ、プラグインエフェクト、どれをとっても
北欧、欧州組にデファクトスタンダードを取られボロ負けの日本ですが、
またMADE IN JAPANを掲げた世界に通用するものを作って欲しいと切に思う。

ヤマハSteinberg買収してるけど)


やはり西洋は強いですね。


なお付け加えると、ヤマハやローランドはコンシューマ向けのDTMでは
引いている印象を受けますが、

 

ヤマハVOCALOIDもあるし、プロオーディオの世界ではホールSR向けの
ハイエンドコンソールでは高い評価を受けています。(たぶん)
ローランドはバーチャルリアリティの追求で楽器のリリースに投資しており、
それぞれベクトルが変わった、というのが一番正しい見方ではないでしょうか。

 

それでも当時からのユーザーとして、いつかコンシューマ向けにも

戻ってきてほしいな、と思ったりしてます。

 

 

なんだか話がぐちゃぐちゃになってきましたが、


日本は今でもアマチュア作家同士のコミュニティや結びつきもあり、
また、そんなアマチュアの作品を楽しみにしてくれるリスナーがいるため
創作のクオリティが維持できてるんじゃないかと思ったりしてます。

 

その創作の輪っかの歴史には、そんな過去があり
平成はそんなDTM黎明期の大事なピリオドだったと振り返っている
というのが結論でございます。

 


2社の平成におけるハードウェア音源開発チェイスについては下記を参照。

(これがなかなか私ら世代には熱い話題)

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/XG%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/GS%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88

 


私は高校生の頃に中古で手にした MU90(平成8年発売の)を長年使っていました。

 

一番のきっかけはデモCDで耳にした "eXtra Groove"というデモソングの
ギターの打ち込みがめちゃくちゃかっこよくて衝撃を受けた事。


その後2002年にギターの打ち込みを武器にヤマハの作曲コンテストで
受賞したことで、俺はプロになるぞーー!と思いつつゲーム制作会社や
ヤマハROLANDなどの会社の入社試験に次々と落選し(笑)

 

普通に営業マンとして就職して今に至っておりすでに
DTM人生は終わったな…という感じだったのだが、
未だに何かを捨てきれず魂がうろうろしているらしい。

 

死んでないということは、自分のDTM人生はまだまだこれからなのかな。


Mozellさんや関西のDTM友達に拾ってもらって助けてもらったし、
令和ではもうちょっと、名前を刻めるように頑張ります。

 

時代に名を刻め~ お前達!(スラムダンクの堀田さんより)

 

なお、最後に非常にマニアックな話題ですが、
ローランドのヒット機種、SC88-PROにはヤマハXG互換(MU50相当)の
データを再生すると自動的にローランド互換に切り替えてある程度の
互換性で再生できるという隠し機能があったんです。


メーカーとしては、ヤマハVSローランドの対決の構図を超えて
最後まで二社の互換性を夢見ていた開発者がいたんではないか…と
思うとなんだか胸がアツくなります。


なお、規格としてはナンセンスに終わったといいつつ、
ひとつ有意義に働いている業界があります。


それは世界に通じる「通信カラオケ」です。
これだけは未だに昔の規格が生きている。

 

長文駄文で失礼しました。(笑