18-0826 光田康典さんの講演会に参加してきた話。
August 27, 2018 (2018/8/27)
8/26に光田康典さんの講演会に
参加してきた話。
光田さんといえば自分の中では
SFC時代のスクエアの作曲家は全員といっていいほど思い入れが
強いので、本人に会えると聞いて
講演内容もよく見ずに応募してしまった。
情報頂いた関西のDTMお友達に感謝。
会社で研修受ける以上にまじめにメモをとりましたし、そしてブログを久々に新たにアカウントとって開設することにしたので、
せっかくなので記念すべき最初の記事はせっかくだから、書き残す価値がある、役に立つような記事にしようじゃないかということで、講演会の内容を備忘録として残す事にした。どうでもいい発言はTwitterでしたらいいんだし。
私の講義ならともかく、光田康典さんの講義ですからね。
録音禁止でしたし。(笑
来られなかったDTMのお知り合いの方や光田さんファンの方に見て頂ければ幸いという所です。
早速ですが講義の内容はそんなに長くありません。
1時間半しかなかったですしね。(30分もオーバーしたけど)
”良い音楽とは?”
という問題提起にはじまり光田さんの主観で創作の上で大事だと定義する、意識すべき3要素を提示。
①フォーカス:
聴かせたいものは何か?
制作のテーマを強くもとう。複数の曲を作るゲームや映像音楽の場合は短いモチーフを活用して
統一感や音楽の存在感を際立たせよう。
*また終盤の質問コーナーの回答で、フル尺の曲作りに作り悩んでいるなら、~8小節くらいの短いモチーフをいっぱい作ってみてはどうですか?と提案がありました。
②カラー:
出したい雰囲気の為にベストな楽器のアンサンブルや、調号(キー)を選択しよう
楽器の鳴り方や響き方を勉強しよう。
背景音楽なのか?情景や感情を描写する音楽なのか?
フォーカスと組み合わせて、楽曲の色彩感を意識して演出しよう。
あまり意識しない人が多いけど、キーには色彩を変える力があるよ!
(との事。
③エコノミー:
余計なものは落としてしまおう。
昨今の制限を受けない制作環境ではなんでもかんでも足し算で曲をアレンジしてしまいがち。
それよりもフォーカスするフレーズやメロディに重みをつけて聞かせたい所の輪郭をはっきりさせる方が大事。
極論、聞こえないくらいのモブ伴奏なら消してもいい。
なお光田さんはこの削り作業だけで
1日使うそうです。なんかせっかく作ったのを落とす作業で1日使うの
勿体ない気が(笑
制限という意味ではSFC時代とかは、チャンネルが少ない、音が悪い、音が選べないなど、表現することに対して仕様上の制限があった。
当時はエコノミーを意識、というよりも逆に、強制的にその環境下で濃厚なものを生み出す工夫をするしかなかった。(SFCでの制作は究極のエコノミーと言っていた)
最近の若い作曲家さんにはセンスとしてこれが欠けていると思うことも少なくないそうです。
このエコノミーの部分はなんだか突っ込まれたような気分になりました(笑)
とはいえ、私もかれこれ20年やってますから”制限がある”ハードやソフトでの環境からDTMをスタートしたのでこの理屈はとても共感するものがあります。
特にPC98で触ってたMMLは 、3チャンネルの単音FM+3チャンネルの単音PSGという実質6個の音しか同時出すことができないという制限がありました。
そして最近の私の曲はなんでも足し算しすぎでぐちゃぐちゃそのものでした(笑)
私はプロではないので制限がないことにテンション上がって楽しんでるだけなのですが、
確かに振り返ると”コンパクトに、綺麗にまとめよう”という
意識が薄れていたことは確かにあるなと思うわけです。
まぁごった煮にもコッテリした別の良さがもちろん存在するとは思いますけどね。
余談ですがこの"エコノミー"の共生(というか強制?)時代を生き抜いたDTMerはその時代に曲作りした経験に対しての自信や拘り、また"想い出"を持っていると思います。あの時代に戻ることはありませんからね。
なので今の便利な環境にちょっとしたジェラシーを持ってる傾向があります(笑)
私なんかはまさしくそうですが。
光田さんもそれを感じてたとするならば、超イイ人だけどやっぱり
普通の人間なんだな、と思ってしまった。(笑)
実は作曲方法についての講義の中心はこの内容だけです。
これは僕の感想ですが、
光田さん自身は現役の作曲家であり、専門講師でも先生でもないわけで、講義では技術的な云々はあまり語られることはありませんでした。
その代わりに色んな音楽を聴いて感覚的なものを研ぎ澄ます事、作りたい物に向かって意識をする事、時代の先端を追い続ける事、など意識のレベルで大事なことを説いておられました。
なので作曲法の講座として受けたと考えるとテーマが曖昧だったかともしれませんが(あくまで”講演会”なので)、
光田さんが子供のように自分の仕事を明るく語る様は、作曲を教える方法うんぬんを聞くよりも、夢を叶えた人の輝きを少し分けてもらったような気持ちになってとても感動したmartinさんだったのでした。参加者みな笑顔だったのがとても印象的です。
あとはイナズマイレブンの新作PVの制作秘話
(ラフ画や絵コンテ、Vコンテに合わせた制作のポイント等)
やゼノサーガの動画にあわせたBGM挿入のコツとか
ありましたけど、ここは僕はおそらくこの先もやることは
ないかもしれないので割愛します(笑)
光田さんは映画の趣味から転じて作曲家になったということもあって単体として好きな曲を作るというよりも映像音楽としての仕事の真を追求されているように感じました。
僕のような素人はそういう映像とのタイアップを
経験することが少ないのですが、やはりやってみたいという気持ちがあるので人脈やチームを形成してそういった引き合いを頂くために何か特別な努力をしなきゃいけないなぁと思いました。
あとは箇条書きで光田さんファンにお勧めしたい現地で得た情報です。
・自然の風景からインスピレーションを得る事が多いので
東京から静岡に引っ越しして気持ちよく暮らしています。
なお光田さんが代表を務める会社、プロキオンスタジオの所在は東京。
・曲を書くときはDAWに直接書き込んでいます。
モックアップ(デモ)を提出する必要が多いため。
・基本的にはピアノ・キーボードで打ち込みする。
・光田さんは自分が認める効率主義。自前のデスクには
エックスキーなるもの(ショートカットやマクロが登録できるキーボード)を
多用して複数回行う作業はワンタッチで短縮するようにしてる。
・人と演奏することは好き。バンドとかやりたいけど
今は創作の仕事がけっこう忙しくて…
・講義中に少しサンプルがかかりましたがNHK山口の依頼で楽曲提供したドラマ、
「朗読家」のBGMが素晴らしいようです!
この朗読屋での仕事の工夫は、主な登場人物が3人ほどいるらしいのですが、メインのリード楽器(Violin、Cello、Choir)を3つ、人物に見立てる事によりそのキャラに感情移入させようという粋な事をやっていました。
https://www.youtube.com/watch?v=sDWivXZC4v0
(↑ そのうち削除されてるかもしれませんが一応音楽も聴けます)
・スクエア現役時代、伊藤賢治さんとはロマサガ2で一緒に仕事をしている。伊藤さんのバトル曲は、社内ではあまり評判が良くなかった(笑)のだが、ユーザーからの支持は絶大で、制作側とユーザーの感じ方の違いがあるんだなと感じたそう。
・行きたい国はエジプトとのこと。スクエアの時に長い休みをもらって行こうとしたところ現地の治安悪化で断念した経緯。
・質問コーナーではよくわからん質問にも丁寧に答える人の好さ。
・物販では本人の手売り+サインということもあり、講義参加者ほぼ全員?が並んでしまい会場パニック(笑)爽やかで清潔なルックスから女性ファンが多いのですが物販で感動のあまり泣き出すファンもおられました。(自分もああなりたいものです 笑)
・ところどころで部下やスタッフの紹介を挟んだりスタッフの作品を自慢するところが超素敵。(私はこういう上司や得意先の偉い人が好き)光田さんの作曲家としての成功というのは音楽的な本質もちろんだけど、管理能力の高さと人柄の良さのほうが大きいんじゃないだろうかと感じさせる講演会でした。
以上、長くなりましたが参加できなかった方のために
いっぱい書きました。
光田さんのお気持ちとして若い音楽家たちがいい曲を作り、このゲーム音楽の産業を盛り上げてほしい!と強く願っていらっしゃる所にとても感動しました。
光田さんとは別件ですが個人的に世話になっているアマチュア創作家のMozellさん(もぜ園)も、”アマチュアが作るゲーム音楽”のマーケットが盛り上がることにとても情熱的で、想い入れと前向きさは大切だなぁと改めて自分に刻むことになりました。
終了後は関西のDTM友達などと集まって10人くらいでビアガーデンを楽しみました! この創作のわっかが楽しく慎ましく広がってくれたらいいなと心から思っております。